中間処理のキモ!?拒絶理由通知について詳しく解説します!




さて、前回のブログでは中間処理の概要について説明しました。

中間処理とは、

「出願後に権利化に向けて特許庁との間で行われる様々なやりとりのうち、『発明内容の補正』に関するやりとりのこと」

でしたね。

この「発明内容の補正」過程では「拒絶理由通知」という書類が登場しますが、前回のブログではこの書類の詳細説明を軽くすっとばしてました(すみません・・・)。

そこで今回は、発明の補正のキモとなるこの「拒絶理由通知」について詳しく説明しようと思います!!

拒絶理由通知とは??

前回のブログでは、発明内容の補正が可能な時期について以下の図を用いて説明しました。

図の①’~③’の時期に発明内容の補正が可能なのですね。


(出典:知的財産権制度入門(特許庁)

そしてこの①’~③’の時期のうち、②’の部分に「拒絶理由通知」が登場します。


(出典:知的財産権制度入門(特許庁)

拒絶理由通知とは、

「実体審査の結果、出願書類に補正が必要な場合に特許庁から送られてくる書類」

のことです。

拒絶理由通知が送られてきた場合、定められた応答期間内に通知通りに発明内容を補正しないと拒絶査定を受けてしまいます。

そのため、拒絶理由通知が送られてきた後の時期は「発明内容の補正が可能な時期」とされているんですね。

拒絶理由通知には2種類ある!!

さて、上の図からは分かりませんでしたが、実は

拒絶理由通知には2つの種類があります!!

「『最初の』拒絶理由通知」「『最後の』拒絶理由通知」です!

さてこの2つ、一体何が違うのでしょうか。

名前から考えて、なんとなく「最初の拒絶理由通知」が先に通知されて「最後の拒絶理由通知」が後に通知されるのかな、という感じはしますが、何だかよく分かりませんよね・・・。

それに、別に「最初」「最後」と名前を別に分けなくても別に全部単なる「拒絶理由通知」でいいんじゃないの?と思う方もいるでしょう。

否!

拒絶理由通知にこのような種類があるのには、れっきとした理由があるのです!!

そしてこの理由を理解するには、これら2種類の拒絶理由通知の違いについて理解する必要があります。

結論から言うと、これらの拒絶理由通知には以下のような違いが存在します。

「最初の拒絶理由通知」と「最後の拒絶理由通知」の違い

違い①:「1回目の審査」で通知すべき内容を少しでも含むかどうか
違い②:補正可能な内容

それでは、これらの違いについて順に説明していきます!

違い①:「1回目の審査」で通知すべき内容を少しでも含むかどうか

これら2種類の拒絶理由通知の違いのひとつは、

「『1回目の審査』で通知すべき内容を少しでも含むかどうか」

というところにあります。

後ほど詳しく説明しますが、審査官による審査は拒絶理由通知の内容やその応答に応じて何度か行われる可能性があります。

「1回目の審査」とは、特許庁に出願後、審査請求をした後に『最初に』行われる審査のことです。

そして拒絶理由通知に関しては、


「1回目の審査」で通知すべき内容を少しでも含む場合:「最初の拒絶理由通知」
「1回目の審査」で通知すべき内容を含まない場合:「最後の拒絶理由通知」

であると定義されます。

「1回目の審査で通知すべき内容」と言われてもピンと来ないかもしれませんが、つまり、

「出願された時点の発明内容を審査した結果出てきた通知内容」

のことです。

中間処理のやりとりでは、審査官からの拒絶理由通知に基づいて出願人が発明を補正し、その補正内容をまた審査官が審査して必要ならまた拒絶理由を発行し・・・、というように、審査と補正が何度も繰り返される場合があります。

その際、補正を行ったことで新たに拒絶理由となる箇所が発生する可能性もありますよね

このような補正により新たに発生した通知箇所は、2回目以降の審査により発見された内容であるはずなので、「1回目の審査で通知すべき内容」には含まれないのです。

文字だけの説明では分かりづらいと思うので、以下で審査の流れと合わせてフローチャートで説明していきます!

審査の流れと拒絶理由通知の種類


出願後に審査請求を行った場合、審査官はまず1回目の審査を行います。
そして審査の結果、補正すべき内容がある場合にはその内容を記載した拒絶理由通知を発行します。

このとき発行される拒絶理由通知には「1回目の審査で通知すべき内容」(図中のオレンジの内容)のみが含まれるはず(だってまだ1回目の審査しかしていませんからね)なので、

この拒絶理由通知は当然、「最初の拒絶理由通知」です。

その後、出願人は「最初の拒絶理由通知」の内容を元に発明内容の補正を行い、手続補正書などの中間書類を提出します。


出願人から提出された中間書類を元に、審査官は2回目の審査を行います。
そして審査の結果、補正すべき内容がある場合にはその内容を記載した拒絶理由通知を発行します。

このときの拒絶理由通知は、記載内容に


1回目の審査で通知すべきだった内容が少しでも含まれる場合→「最初の拒絶理由通知」
1回目の審査で通知すべきだった内容が含まれない場合→「最後の拒絶理由通知」

ということになります。

図中のオレンジ色は①でも述べたように「1回目の審査で通知すべき内容」であり、
図中の青色は、①の「最初の拒絶理由通知」を元に出願人が補正を行った結果として2回目の審査で新たに発生した拒絶理由を示しています。

つまり、


オレンジ色と青色を両方含む拒絶理由通知は「最初の拒絶理由通知」であり、
青色のみを含む拒絶理由通知は「最後の拒絶理由通知」である

ということになりますね。

ちなみに1回目の審査で発見された拒絶理由は原則として全て①の拒絶理由通知で通知されるため、②の拒絶理由通知は「最後の拒絶理由通知」となるのが普通です(図中のパターン2)。

しかし①で最初の拒絶理由通知を出す際に審査官が通知すべき箇所を見落としていた場合などには、②の拒絶理由通知にてその内容を通知することになります。
このような場合に、②の拒絶理由通知も「最初の拒絶理由通知」となるのです
(図中のパターン1)。

審査官も人の子です。このような見落としもあり得ますよね・・・。

図中のパターン1の場合、その後も特許庁と出願人間のやりとりが続き、最終的に1回目の審査で通知すべき拒絶理由を含まない拒絶理由通知が「最後の拒絶理由通知」として発行されます。

「最後の拒絶理由通知」は名前通り「最後」の通知です。つまり、それに対する応答が最後の補正チャンスです。

「最後の拒絶理由通知」に対する応答を元に、特許査定となるか拒絶査定となるかが決まります。

「最後の拒絶理由通知」の存在意義は?

さて、ここまでの説明で「最初の拒絶理由通知」と「最後の拒絶理由通知」がどういったものかは分かっていただけたかと思います。

しかし、もしも「最初の拒絶理由通知」と「最後の拒絶理由通知」に、

「『1回目の審査』で通知すべき内容を少しでも含むかどうか」

という違いしかないのであれば、別にこれらをわざわざ別の名前にする必要はないのではないでしょうか。

『1回目の審査』で通知すべき内容を含まない拒絶理由通知を最後の通知とする、としておけばよいだけでは?と思いますよね。

そこで関係してくるのが、上で挙げた2つ目の違い、

「補正可能な内容に関する違い」

なのです!

違い②:補正可能な内容

そうなのです。

「最初の拒絶理由通知」と「最後の拒絶理由通知」に対する応答とでは、補正可能な内容が異なるのです。

実は前回のブログに載せていた表の中に、その違いがこっそりと記載されています(笑)。

この表から、

「最後の拒絶理由通知」に対する応答では、「最初の補正通知」に対する応答よりも補正可能な範囲が狭くなる

ということが分かりますね。

ではなぜ、このような違いが定められているのでしょうか。

これは基本的には、前回のブログにて、

「時期的要件」と「実体的要件」との関係性に関する考察

として記載した内容と同じ理由です。

先ほど説明したように、「最後の拒絶理由通知」には「1回目の審査」で通知すべき内容は含まれていません。
つまり、拒絶理由通知に応答して出願人が補正を行った結果として新たに発生した通知内容のみが記載されます。

つまり、「最後の拒絶理由通知」は審査の最終段階なのです。

その段階になって大きな補正がなされると、それまでの審査結果を有効に活用できませんし、出願間の公平性を保つことも難しくなりますよね。

そのため、「最後の拒絶理由通知」では補正可能な範囲をより狭くしているのです。

これが、わざわざ「最後の拒絶理由通知」という別の名前の拒絶理由通知を定めた大きな理由なんですね。

拒絶理由通知への応答方法

これまで説明したように、拒絶理由通知に対しては基本的には手続補正書、意見書などの「中間書類」により応答を行いますが、実はこれ以外の応答手段もいくつか存在します。

以下にまとめてみました。

ここでは詳しくは触れませんが、実にいろいろな応答手段があるんですね~。

担当審査官と面談ができるというはいいですよね。発明の内容をより詳しく理解してもらえば審査がスムーズになる気がします。

まとめ

拒絶理由通知には「最初の拒絶理由通知」「最後の拒絶理由通知」の2種類が存在し、これらはその通知内容それに対する補正可能な範囲が異なる、というお話をしました。

審査がよりスムーズかつ公平になるように、特許制度はどんどん改訂されてきたんだろうなあ・・・。
と、その歴史に思わず思いをはせてしまいました。

そして拒絶理由通知の詳細を知りそれを身近に感じることで、拒絶理由通知を翻訳する際の障壁も幾分低くなるのではないでしょうか。

もし中間処理関係の翻訳をする機会があれば、ぜひ挑戦してみてくださいね!

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