翻訳コメントの付け方って??私の場合はこうしてます!




「翻訳するときには、訳文だけではなく『翻訳コメント』も付けるべきだよ」

これ、翻訳者として稼働を始めたい!!という方が一度は耳にする言葉ではないでしょうか。

でも、急に

「翻訳コメント」

と言われても、具体的に何をどうコメントすればよいのか分からないという方も多いと思います。

実際、私もそうでした・・・。

そこで今回は、このなんだかよく分からない、

「翻訳コメント」

というものについて、

  • どんな目的で翻訳コメントを付けるのか
  • 具体的にどんなときに翻訳コメントを付ける必要があるのか
  • 翻訳コメントを付ける際に気を付けるべきこと

ということを解説していきたいと思います!!

プロの翻訳者としてやっていくには、翻訳コメントがどんなものであるかを理解した上で、必要な箇所に適切にコメントを付けるのは必須。

翻訳コメントについて、しっかり&がっつりと理解していきましょう!!

翻訳コメントを付ける目的とは

そもそも、翻訳コメントとは何を目的として付けるものなのでしょうか。

いろいろな考え方があると思いますが、私は、

相手(翻訳会社や特許事務所など)が訳文を推敲・修正するにあたり役立つ情報を伝えるため

だと思っています。

どんな仕事でもそうだと思いますが、相手とのコミュニケーションありきですよね。

自分自身で「完璧な訳文が書けた!!」と思ったとしても、その訳文を読んだ相手が自分の意図を正確に理解できずに、

「これは誤訳なんじゃないか・・・、いや、でもこういう意味で訳されたんだとしたらそうとは言えないかも・・・??」

と悩んでしまうかもしれません。

これは、自分と相手とのコミュニケーションができていない状態ですね。

これでは相手に余計な手間をとらせてしまうことになります。

例えば、もしあなたが翻訳会社のコーディネーターだとして・・・、

自分の訳出の意図を過不足なく・正確に伝えてくれる翻訳者と、そうではない翻訳者。

どっちに翻訳を頼みますか??

・・・間違いなく前者ですよね。

だって、その後の工程の手間を増やしたくないんですもん。

というわけで、相手に役立つ情報を過不足なく伝える、というのは翻訳者にとって重要なことなのです。

翻訳コメントの3つのパターン

「じゃあ、具体的にどんなときにどんなコメントを書いたらいいのさ!!!」

・・・はい、まずは落ち着いて・・・!

私は、コメントの種類には3つのパターンがあると思っています。

コメントの具体例を挙げる前に、まずはその3つのパターンについて説明させてください。

後で述べる具体例も必ずこの3パターンのどれかに当てはまるので、最初にこれらのパターンを理解しておく方が分かり易いと思います。

パターン1:訳出の意図を伝える

基本はこれです。

訳出の意図を伝える。

例えば訳出が少し難しい箇所などを自分で少し工夫して訳出した場合。

訳文だけを見て、相手がこちらの意図を正確に理解することは困難だと思います。

意図が正確に伝わらず、自分で精一杯考えて正確に訳した箇所が誤訳ととられる可能性もあります。

そんなことにならないよう、自分の訳出意図を伝えるのは大切なことなのです。

パターン2:訳出の根拠を伝える

これも大事です。

訳出の根拠を伝える。

自分の訳出はしっかりとした根拠・参照元があるものだということを示すのです。

特許明細書は技術文書。つまり、内容を正確に伝える必要があります。

その正確性を担保するためには、訳出に根拠が必要です。

その根拠をしっかり伝える必要があります。

パターン3:代替案を伝える

これも意外と重要です。

代替案を伝える。

自分が「こちらの訳出の方がよい」と考えて訳出したとしても、相手はその訳文を見て

「この方法でもいいんだけど、もっと他の訳出方法はないのかなぁ・・・」

と思うかもしれません。

そんなとき、代替案を示しておくと相手は助かりますよね。

相手のためにいくつか選択肢を用意しておくことも、ときには必要なのです。

具体的にどんなとき・どんなコメントを付けたらよいのか??

それでは、具体的にどんなときに、どんなコメントを付けたらよいのでしょうか??

翻訳会社や案件によってももちろん違いますが、基本的に私は以下のような場合にコメントを付けるようにしています。

  • ①原文ミスがある場合
  • ②意訳した箇所
  • ③参考資料・Webページがある場合
  • ④同一用語を訳し分けている場合
  • ⑤異なる用語の訳語が重複している場合
  • ⑥過去の類似案件・類似明細書を参考にした場合
  • ⑦他の訳出方法(代替案)がある場合

それでは、各項目について順に説明していきます!

①原文ミスがある場合

原文ミス、これ意外とあるんですよね。

PCT出願だと原文ミスがあっても原文通りに訳してください、と言われることが多いですが、

そのような場合でも原文ミス(スペルミス、文法ミス、技術的内容のミスを含めて)は指摘しましょう。

そうすることで、その明細書の続編を作成する際にクライアントがそのミスを修正することができるためです。

②意訳した箇所

直訳すると訳文が不自然になる場合、意訳することも多いです。

このような場合、直訳するとどうなるか示したうえで、意訳した理由を説明しましょう。

③参考資料・Webページがある場合

技術関連箇所を翻訳する際に参考にした資料やWebページがある場合、コメントに記載しておきます。

これは訳文の信頼性を高めるために必要なことです。

訳出中に参照した資料全てをコメントに記載すると大変なことになるので(というかそれではコメントしすぎなので)、

私の場合、基本的には一般的にあまり使われていない用語や訳出困難な用語を訳出する際に参考にした資料についてのみコメントしています。

ちなみに、コメント中に記載するのは権威がある参照元(企業や学会のWebページ、書籍など)の方がよいです。

それ以外の個人Webページなどは信頼性が担保されていないため、コメントを付けると逆効果になる可能性もあります。

④同一用語を訳し分けている場合

特許翻訳では、同一の用語(特に技術的用語)は訳を統一するのが基本です。

ですが、まれに文脈上、どうしても訳し分ける必要がある場合もありますよね。

その場合、根拠を示したうえでコメントしておきます。

コメントし忘れると、単なる「用語の不統一」とみなされてしまう可能性もあるので、要注意です!!

⑤異なる用語の訳語が重複している場合

④とも関連しますが、特許翻訳では、異なる用語(特に技術的用語)は訳し分けするのが基本です。

ですがまれに、文脈上、訳し分けが困難な場合もあります。

その場合、根拠を示したうえでコメントしておきます。

コメントし忘れると、単なる「用語の重複」とみなされてしまう可能性もあるので、要注意です!!

⑥過去の類似案件・類似明細書を参考にした場合

特許明細書の場合、類似の案件・類似の明細書が既に存在する場合が多いです。

この場合、技術的用語の訳し方や文体などに関してはこれらの明細書を参考にすることも多いでしょう。

そのような場合、過去の案件番号や明細書番号などをコメントしておきます。

⑦他の訳出方法(代替案)がある場合

訳出に関して、代替案がある場合はコメントに記載しておきます。

私の場合、技術的用語の訳し方や、用語の統一方法に関して代替案をコメントすることが多いです。

翻訳コメントを付ける際に気を付けるべきこと

さて、これでどのような場合にコメントを付けたらよいか、なんとなく理解いただけたかと思います。

「よ~し、この通りにコメントを付けたらいいなら簡単だ!!早速コメント付けまくるぞ!!」

と思っているあなた。ちょっとお待ちください。

一番最初にも述べましたが、コメントは

相手(翻訳会社や特許事務所など)が訳文を推敲・修正するにあたり役立つ情報を伝えるため

に付けるものです。

上で示した項目全てに常にコメントを付ける必要はありません。

そこは相手目線に立ち、臨機応変に考える必要があります。

(このあたりが翻訳者各個人のノウハウになっているのだと思います)

このことを常に意識しないと、不要な箇所に自分勝手なコメントを付けてしまうことになりかねません。

相手目線に立つため、私の場合は基本的に以下のことを意識しています。

  • 相手はどんな情報が欲しいのか
  • 相手はこのコメントを読んで嫌な気分にならないか
  • 鉄則:必要な箇所に必要な分だけ

コメントは相手のため!!

これを忘れないようにしましょう。

終わりに

翻訳コメントとは何か、コメントを付けるべきポイント、コメントを付ける際に気を付けることに関して、順番に説明してきました。

翻訳コメントの重要性に関して理解いただけたのではないかと思います。

コメントを付けるべきポイントは翻訳会社によっても大きく異なるので、フィードバックをくれる翻訳会社であれば、フィードバックを元に少しずつコメントの付け方を修正していくのがよいでしょう。

フィードバックがない会社の場合は、自分から聞いてみるのも手だと思います。

ちなみに私の今までの経験上、コメントが少なすぎるよりは多めの方が喜ばれるという印象です(程度問題ではありますが)。

どこにどんなコメントをすればよいかは、やっぱり実践経験を積んで、肌感覚で身に付けていくしかないと思います。

しかしやはり、基本的にはやっぱりこれです。

コメントは相手のため!!

これを忘れず、日々精進していきましょう!

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