発明の保護だけではない!特許制度の真の目的とは?




みなさんは、「特許」と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?

一般的には、「発明を保護するためのもの」というイメージが強いのでは、と思います。
実際に私も、特許に関しては「保護」というイメージしか持っていませんでした。

しかし実は、特許制度にはもっと壮大な目的があったのです!!

明細書を翻訳する際も、この目的を理解して、この特許が公開されることであんな効果やこんな効果があるんだな、という具体的なイメージを持った上で翻訳すれば、きっと楽しいことでしょう・・・。

今回は、この「特許制度の目的」について解説したいと思います。

特許制度の真の目的は、「産業を発達させること」だった!

そう。特許制度の真の目的は、発明を保護することではありません。

「産業を発達させること」

なのです!

分かりやすいように、特許制度の最終目的までの流れを図にしてみました。

上図を見ると、「保護」は「産業の発達」に至るまでの途中過程でしかないことが分かりますね。

もしも特許制度がなかったら

最初に小話をひとつ。
特許制度がない世界で起こりうるお話です。

——
~特許制度がない世界でのある出来事~

Aさんは掃除機を開発する会社(X社)に勤める開発者です。
X社は同業他社であるY社との競争が激しく、両者は常に相手の動向を探りながら開発を進めています。

ある時Aさんが、これまで世の中になかった新たな機能を備えた掃除機を開発しました。

【Aさん】
よし、やってやったぞ!!これでY社に勝てる!
この技術がY社に盗まれたら大変だ!!厳重に隠しておこう!!!

こうしてAさんは、この技術をX社だけの秘密とすることにしました。

Y社にこの技術を知られてはいけない・・・。
いつしか、Aさんの頭の中はこのことでいっぱいになりました。

展示会に出展するなどもっての他。製品に組み込む際にも、最新の注意を払わないといけない。

・・・この結果、Y社はこの技術をうまく製品化することができず、売り上げもあまり伸びませんでした。

一方でY社の開発者Bさんも、日夜掃除機の研究開発に勤しんでいました。

長い歳月が経過し、Bさんはとうとう、これまで世の中になかった新たな機能を備えた掃除機を開発しました。

・・・なんと、その機能はAさんがX社で開発したものと全く同じものでした。
——

いかがでしたでしょうか。

発明というのは、目に見えない、形のないものです。誰かが占有できるものではありません。
そのため発明を保護する制度がない場合、発明者(Aさん)は、発明を他人に盗まれないように秘密にしておこうとするでしょう。
そうすると、Aさん自身も発明を有効に利用することができません。

さらに、発明を秘密にしておくことで、他人(Bさん)が労力をかけて全く同じ発明をしてしまう可能性もあります。
これって正直無駄ですよね。

このような事例を防ぐことが、特許制度の目的なのです。

では、先ほども示したこの図。

この図の各過程について、順に説明していきます!

特許制度により産業の発達が促されるまでの流れ

発明の公開

特許制度の前提となるのは、「発明の公開」です。
まずはこれがないと始まりません。

「発明の公開」がどのような効果をもたらすのか。どんどん見ていきます。

発明の保護(権利者・発明者)

「発明の保護」の対象となるのは言わずもがな、発明者(権利者)です。

特許制度では、発明者(権利者)に対して、

「発明を公開した代償として、一定期間、一定条件の元に独占的な権利(特許権)を与え、その発明を保護する」

ことを明記しています。
保護してあげるから発明を公開してよ~ってことですね。

発明者にとって、自分の発明が世間に認められて保護されるのは非常に嬉しいことでしょう。
自分のこれまでの苦労が報われた・・・と思うと同時に、次なる発明への意欲も増すはずです。

発明の利用(第三者)

「発明の利用」の対象となるのは第三者ですね。

発明が公開されることで、第三者がその発明を利用できるため、新たな改良技術の開発を促進させることができます。
つまり、第三者は公開された発明からヒントを得た上で、そのさらに上を行く発明をすることができるわけですね。
「じゃあ俺はこの発明のここを改善して、さらに素晴らしい発明にしてやる!」という感じで、発明意欲も増しそうです。

先ほどのBさんのような、Aさんの技術をそのままもう一度開発してしまう、といった無駄がなくなるわけです。

産業の発達

「発明の保護」により、発明者(権利者)の次なる発明意欲が増し、

「発明の利用」により、第三者による改良技術の発明が促されます。

これらの結果、発明者や第三者が新たな発明をする可能性が高くなり、「産業が発達」するわけですね。

さて、これでようやく「産業の発達」までたどり着きましたね。
この「産業の発達」が、特許制度の最終目的なのです!

特許法での記載

実は特許制度の目的は、特許法第1条にて示されています。

「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的とする。」

(特許法第1条)

この条文からも、

①「発明の保護及び利用」→②「発明を奨励」→③「産業が発達する」

という流れが読み取れますね。

おわりに

特許制度の目的は、単に「発明を保護すること」ではなく、その先にある「産業の発達」である、というお話をしました。

今回のように「発明の公開」から順を追って見ていくことで、確かに特許制度により「産業の発達」が促進されるであろうことが理解できたと思います。

明細書を翻訳する際には、「私がこれを翻訳することで産業が発達する可能性があるんだな・・・」と思いながら翻訳すると、楽しいのではと思います!笑

それではまた!

参考

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