久しぶりとなってしまいました、睡眠シリーズ!
今回は山田朱織研究所の整形外科枕に関する特許紹介、2回目です。
(前回の記事はこちらです)
特許情報
【公開番号】特開2004-209099(P2004-209099A)
【公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【発明の名称】マクラの高さの調整方法
【出願人】
【識別番号】503014403
【氏名又は名称】山田 朱織
前回までのあらすじ
頸椎症状を緩和するために生み出された山田朱織研究所の整形外科枕。
前回は、
- 頸椎&頸椎症状とは
- 睡眠時に頸椎に負担がかかる理由
- 頸椎症状を抑える、つまり頸椎を安定して支えるための枕の条件
について解説しました。
さすが整形外科のお医者さんが開発した枕というだけあり、
明細書にも体の構造に関する専門的な記載が多く見られました。
(ここはまくらぼの特許とは違うところですね)
今回はその続き!
各人に最適な枕の高さを決定するための具体的な方法について説明します。
適切な寝姿勢
前回も述べましたが、睡眠時に頸椎に負担をかけないためには、上向き寝において以下のような寝姿勢となる必要があります。
(特開2004-209099 図7)
(特開2004-209099 図1)
図7のように、枕が使用者の体型に対して適切な高さである場合には頸間孔が最大限に拡大されているため神経が圧迫されず、頸椎症状が現れにくくなります。
図7における、頸椎と床面に平行な線との角度を具体的に示したものが図1です。
図1にあるように、この角度は10度前後が最も適しているようです。
(図1の赤丸部分を参照)
つまり、
この状態での枕の高さhが、本発明で言う「快適な枕の高さ」
ということになります。
では、この高さhをどのように求めればよいのでしょうか。
適切な枕の高さを求める手段
こちらも前回軽くご紹介しましたが、
枕の高さhは以下のように、横向き寝の状態にて体軸中心線と床面とがほぼ平行になるようにして求めます。
(特開2004-209099 図10)
あれ?おいおい、さっきは頸椎症上が出ない枕の条件を上向き寝で決定したのに
実際の測定は横向き寝でやるの?それで大丈夫なの??
と思われるでしょう。それが、大丈夫なのです。
ここでのポイントは、
「上向き寝(図1)と横向き寝(図10)の条件で測定した枕の高さhはほぼ一致する」
ということです。
以下にこれらの図をもう一度、並べて示しますね。
(特開2004-209099 図1)
横向き寝:
(特開2004-209099 図10)
これはつまり、
横向き寝での測定により、上向き寝での最適な枕の高さを求められる
ということ。
上向き寝で頸椎と床面との角度αを測定するよりも、
横向き寝で体軸中心線と床面が平行になっているかどうかを見る方が楽そうですもんね。
ただし、
「横向き寝でのh=上向き寝でのh」が成立するのは、
枕の高さを5mm以内刻みで調整できる場合のみだそうです。
1cm刻みになると、上向きでのhの方が横向きでのhよりも高くなってしまうそうな。
(このあたり、なぜなのかはよくわかりません。すみません・・・。)
なので、実際の調整は5mm刻み程度で行うそうです。
整形外科枕の構造
以上のような細かい調整が可能な枕。以下のような構造をしています。
まくらぼの枕とは違い、一枚板になっているんですね。
(特開2004-209099 図12)
低反発ウレタン40と高反発ウレタン41の下に、段付板材42と43が配置されています。
図1のような適切な姿勢を保つには頭部がマクラに沈み込みすぎないことが重要であり、
沈み込みが小さくなるような材料を採用しているそうです。
図1をもう一度示します。
(特開2004-209099 図1)
赤丸で示すように、頭部6をポイントCだけで支えています。
枕の高さは、ウレタンの枚数を変えたり段差のコマ45の位置を変化させたりして調整します。
体格スコアとマクラの高さとの関係
毎回毎回わざわざ寝て測定するのは面倒くさい!!
そういう場合のために、おおよそのマクラの高さを簡単に求める方法があります。
以下の
「体格スコア vs マクラの高さ」グラフ
を使用するのです。
(特開2004-209099 図4)
(※筆者が接触した頸椎疾患患者、約50名のデータから作成したもの)
体格スコアというのは、各人の身長と体重から一意に決められるスコアのことです。
以下の身長スコアと体重スコアの和がその人の体格スコアと定義されます。
(※スコア1:身長スコア、スコア2:体重スコア)
体格スコアとマクラの高さはおおよそ比例するため、上の表を元に自分の体格スコアを決定して、図4のグラフから自分に合った高さのマクラを決定できるのです。
これなら遠方に住んでいて測定のためにわざわざ店舗にいけない、という人にも、おおよそ高さのあったマクラを提供することができますよね。
そもそも頸椎症状のあるだと外出するのも大変でしょうし、そういう方のために筆者はこの表を作成したのではないでしょうか(あくまでも予想ですが)。
まとめ
今回の特許は、枕の構造というよりもその高さの決定方法がメインでしたかね。
構造は一枚板で簡単なものですが、高さを工夫することで頸椎症状を発症しにくい枕を提供できる、という内容でした。
以前読んだまくらぼの特許とは全く違う内容であり、
同じオーダーメイド枕と言っても会社によって様々なのですね。
次回はまた別の会社の特許を読んでみたいと思います!!
ではまた次回、お会いしましょう!
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